ショートショートを書いてみよう その2

 

この物語はフィクションであり、実在する人物、名称、団体とは一切関係ありません。

 

 

【サンドイッチのような恋人】

 

「キミってコンビニのサンドイッチみたいな人ね」

彼女はそう告げると、悲しそうな目をして帰ってしまった。

 

サンドイッチみたいな人……?

僕は彼女の言葉の真意がわからず、帰り際コンビニに寄ってサンドイッチとコーヒーを買って家で食べてみることにした。

折り重なったパンの間に、新鮮なレタスやトマトがたっぷりと挟み込んである。

丁度お腹が空いていたこともあり、見ているだけでヨダレが出そうだ。

 

早速コーヒーを開け、サンドイッチを袋から一つ手に取り頬張った。

「……あれ?」

一口食べてすぐに違和感を覚えた。

思っていた食感とは明らかに違う―――何かがおかしい。

 

僕はもう一つ残っていたサンドイッチを恐る恐る開いて……

彼女の言いたかったことを直ぐに理解し、同時に恋人でい続けることに何の努力もしてこなかった自分の愚かさを恥じた。

 

 

 

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【人生の攻略法】

 

4月から新社会人になって、俺はあることに気付いてしまった。

人生には攻略法なんてものは存在しない。

ただし『過去の自分』に対してなら、後から攻略法を見出すことが出来るということだ。

 

例えば小学生時代。

駅前のビルの五階にある学習塾には絶対入るな。

そこの塾長はノートを余白たっぷりに取って書かないと何故か激怒する上に、

結局お前は塾より一階にある古本屋でマンガの楽しさに目覚めて成績を大暴落させるぞ。

 

例えば中学生時代。

中学一年の一学期、休み時間に突如として開催された『腕相撲大会』には絶対に参加しておけ。

お前が女子と手を繋げるチャンスは、この時を逃すと、三年の体育大会でマイムマイムを踊る時しか残ってないぞ。参加した上で出来るだけ試合を引き延ばせ!

 

例えば高校生時代。

誰も立候補が居ない学級代表の役職を担任から薦められても絶対に断れ。

お前は大人になってから、図書委員をやりたすぎて猛烈に後悔することになるぞ。

 

もし過去の自分に攻略法を書いた手紙を送れるなら、俺の学生時代はもっとまともだったに違いない。何とかして過去にメッセージを送れないだろうか。そんなことを考えていたら、時刻はもう夕方になっていた。今日も充実した一日だった。早く家に帰ってシャワーを浴びよう。

 

 

―三か月後―

 

勤務中に余計な妄想してないで仕事しろ、試用期間で解雇されるぞ。

 

 

 

 

画像引用:コンビニのサンドイッチは具が偏っていて嫌われている - NAVER まとめ