一人ぼっちの書き出し&結末小説大賞
ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変わってしまっているのに気づいた。
(カフカ・フランツ「変身」)
書き出し小説大賞というのをご存知でしょうか。
色んなネタをネット上で検証や取材をし、記事にしている面白ウェブサイト
「デイリーポータルZ」で2012年から行われている企画です。
小説の冒頭となる書き出しだけを読者から募集し、評価するという企画なのですが、これが結構面白い。
たった数文なのに「続きが気になる!」と思わせるものや、書き出しだけで小説全体の雰囲気が伝わってくる名文もあります。
その後の展開は読者に任せる!という想像力をかきたてる投げやりなポイントも魅力。解説も注釈もありません。
今回はこの面白そうな企画をパク…リスペクトして募集…しても集まらないため一人で書いてみんなで評価する新コーナーをやります。
この書き出しの続き読みたいいいい~ってなってくれたら幸いです。
書き出し自由部門
そこおかず乗ってないよ。俳優がお洒落なタレをお皿一面に散りばめるのを確認して、私は今日も家を出る。
カバが脱税したって、きっとアンパンは殴らない。
これアメリカじゃ大爆笑なんですけどねぇ。
叔父がギャグで滑った時のいつもの言い訳が始まった。
電気風呂に両足を入れた時、あまりの衝撃に心臓が停まりそうになった。それでも今生きているのは、ここで死んだらネット上で永久に笑いものにされるかもしれないという恐怖と羞恥心のおかげだ。
自販機に130円を入れてから迷う人にはなりたくない。
学校を休んだ仲谷さんの家のポストに、明日の時間割と給食のコッペパンを突っ込んだ。翌日、登校してきた仲谷さんは少し機嫌が悪かった。
私は雪女。山小屋で登山者が迷い込むのを待っている。
コンコン。コンコン。扉が鳴った。
さっそく今日も一人、獲物がやってきたようだ。
浮き立つ気持ちを抑え、私はこたつから出た。
書き出し規定部門 モチーフ『淡い恋』
※テーマに沿った内容の書き出しを考える部門です。詳しくはこちら。
振られたら慰めてやるよ。背中を叩いて友人を送り出す。この恋はきっと上手くいく。そのあと私はきっと泣く。
「窓を開けても幼馴染なんていない」
この言葉を理解するのに20年かかった。
電子レンジでゆで卵を爆発させるキミが、今夜うちに来る。
拝啓 悩める後輩君へ
確かに君は優しいし、いつも恋人を一番に考えているのは伝わる。
でもね、優しさと優柔不断はいつだって背中合わせなんだよ。
チャーリー・ブラウンじゃなく、たまにはルーシーを見習ってみたらどうかな?
書き出し小説は以上です。
10月頃からぽつぽつ考えてたんですが、難しくてあまり浮かびませんでした。
さて、ここからはオリジナル。
書き出しがありなら結末だけ書くのもありだよねってことで
一人ぼっちの結末小説大賞。
書き出し小説は書き出しだけですが、こちらは小説の結末だけを書きます。
読んだ人が「うひょ~どんな中身だったんだろう?」って想像を膨らませたら勝ち!
結末小説部門
「形あるものはいつか壊れるっていうけど、形のないものだって壊れるし元に戻らないことだってあるんだよ。そういうのは大体壊れてから気が付くんだけどね。だからどちらかというと覆水盆に返らずのほうがしっくりくるかな」
矢継ぎ早にそう言って仕事に戻る彼女の眼は薄く充血していた。しかし私が今まで見た中で最も晴れやかな表情だった。
読者諸君ももうお気づきだろう。結局彼がこの長い旅で得たものは亀の子タワシと闇鍋スターターセットだけだということに。
「月が綺麗ですね」
ヒカルの精一杯気取った告白に明石さんはからかうように返事をした。
「手を伸ばしても届きませんけどね……月は」
以上です。
なんていうか…結末小説を考えてる間、ずっとニヤニヤしてました。
楽しかったのでまたいつかやります。
本家にはもっともっと面白い名文が沢山あるので良かったら見てみてください。
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